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Peter Gabriel / Scratch My Back [Music]

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ピーター・ガブリエルが 7 年ぶりに
新作『スクラッチ・マイ・バック』をリリースしました。
今回挑んだのはカヴァー・アルバムで、
デヴィッド・ボウイ、ポール・サイモン、
トーキング・ヘッズ、ニール・ヤング、レディオヘッド、
エルボー、アーケイド・ファイア、ボン・イヴェールなど
の曲をカヴァーしていますが、ガブリエル流は違います。
本当にすべての曲が新曲のような輝きを放っています。
静の世界を見事に表現していると思います。
HPに本人のインタヴューを掲載しているページがありましたので、
それを紹介させてもらおうと思います。

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ピーター・ガブリエル インタビュー
取り上げた各アーティストとその楽曲、制作秘話を語る

01.「ヒーローズ」
前作『ロウ』からさらにヨーロッパを意識した、デヴィッド・ボウイの名盤。
「ヒーローズ」は決めゼリフのカッコよさはもちろん、
バック・サウンドの意外な温かさも見逃せない。
イーノ、ロバート・フリップも参加。
(オリジナル:デヴィッド・ボウイ『ヒーローズ』収録)

「これは、憂鬱や絶望感をものともせずに、
立ち向かおうとするヒロイズムなんだよ。
つまり、絶望的な状況に置かれているにもかかわらず、
意気揚々と勝ち誇っている様を表わしているんだ。
僕らはまずこの曲に対して2、3の方法を試してみたんだが、
あまり満足がいかなくてね。
それで面白くなってくるまで、アコースティック・ギター
のサンプリングを操作してみたんだ。
そこから、僕の目指したいのはこういう方向
なんだと指示できる音が生まれた。
これまで自分が聴いてきた中で、最も素晴らしい
ロック・ソングのストリング・アレンジだと思ってるよ。
この曲は、今回のアルバムでは大胆なアプローチ法
を採ってもいいんだという、自信を与えてくれたんだ。
見事な仕上がりになったと思う。
というのもこの曲は、原曲の鍵となっていたギター
やドラムの推進力抜きで、一気に迸る凄まじい緊張感を作り出しているからね」


02.「ザ・ボーイ・イン・ザ・バブル」
ポール・サイモンが刻んだロック界の
マイルストーンは、二つの大陸を結ぶ
偉大なるコラボレーションだった。
86年度のグラミー賞で最優秀アルバム
賞を受賞した傑作アルバム。
(オリジナル:ポール・サイモン『グレイスランド』収録)
 
「多くの人々にとって非常に重要な作品
となっているアルバム『グレイスランド』の収録曲だ。
あのアルバムは、喜びいっぱいのアフリカ的な要素に満ちていたね。
でも、多くの人々が気づいておらず、また僕自身も
最初は気づいていなかったのが、
この曲には類い稀なほど素晴らしい歌詞がついているという点なんだ。
この25年間に世に出たロック/ポップスの曲の中で、
最高の歌詞の一つに数えられると思う。
かなりダークでさまざまな問題を孕んでいて、
何層もめくっていくと、やがてそれが露呈するんだ。
ポールからメールを貰ったんだけど、
そこで彼も殆ど同じことを言っていたよ。
今回は、曲そのものと歌詞に語らせるような形にしたくて、
音数の少ないアレンジにした。
結果として、この曲はおそらく、この上ないくらい音の密度が薄いと同時に、
強力なものになっているんじゃないだろうか」


03.「ミラーボール」
英マンチェスター出身のバンド、エルボーの4枚目。
2008年度マーキュリー・プライズを獲得した作品で、
独特のメロディ展開がクセになる
「グラウンズ・フォー・ディヴォース」などを収めている。
(オリジナル:エルボー『ザ・セルダム・シーン・キッド』収録)
 
「エルボーと出会ったのは、彼らがあの名プロデューサー、
スティーヴ・オズボーンと一緒に、1stアルバムを制作した時だった。
その後、彼らが僕のアルバム『UP』の収録曲「モア・ザン・ディス」
で手掛けたリミックスを非常に気に入ってね。
彼らのやっている音楽を聴き込むようになり、
素晴らしい音楽的才能があると思ったんだ。
革新性にあふれ、美しいメロディがちりばめられているとね。
この曲を歌ってみようとしていた時(ちなみに歌いにくい曲だった!)、
僕が昔ジェネシス時代に書いた
(たとえば「Got To Get In To Get Out」のような)、
厄介な音程の上り下がりがふんだんに盛り込まれたメロディ
を歌おうとしていた時のことを思い出したよ。
この曲のアレンジは最も気に入っているものの一つで、
ストラヴィンスキーの「春の祭典」との関連性がある。
ロック・ソングにおける弦楽アレンジというものは、
しばしば“甘みを加える”ために用いられる場合がある。
ここでのアレンジは、楽曲に確かな品位を与えていると思う。
ロック・バンドのための装飾的な背景となっているのではなく、
愛情と情熱と激しさとグルーヴとをもたらすために、
オーケストラの全色彩を駆使しているんだ」


04.「フルーム」
ジャスティン・ヴァーノンによるソロ・ユニット、
ボン・イヴェールが2009年に発表したデビュー・アルバム。
囁くようなか細いヴォーカルが印象的な一作で、
各国で絶賛の嵐を巻き起こした。
(オリジナル:ボン・イヴェール『For Emma, Forever Ago』収録)
 
「ボン・イヴェールとは、僕の下の娘メラニーの紹介で知り合ったんだ。
メラニーが彼の大ファンでね。この曲は、聴いてすぐに心に焼き付いたよ。
彼の曲はいくつか歌ってみようと試したけれど、
直観的に“コレだ”と思ったんだ。
最初に手掛けたアレンジは、ブラスを土台にして作ったものだった。
非常に気に入ってはいたんだけど、でもヘヴィ過ぎて、
コントラストに欠けていると感じてね。
最後のぎりぎりの段階で、僕はピアノの前に座り、
ァース部分に合う、ごくシンプルなパートを探し出そうとした。
そうすることで、ブラスの入りがより意味深いものになるからね。
当初は数行、違和感のある歌詞もあったんだけど、
時間をかけていくにつれ、自然に感じられるようになった。美しい曲だよ」


05.「リスニング・ウィンド」
トーキング・ヘッズの最も重要な作品。
メンバー以外のリズム隊に黒人ミュージシャンを起用し、
ロックとアフリカン・ビートの融合という前衛的な試みを見事に結実させている。
(オリジナル:トーキング・ヘッズ『リメイン・イン・ライト』収録)
 
「トーキング・ヘッズはずっと、僕の最もお気に入りのバンドの一つで、
『リメイン・イン・ライト』は中でも一番好きなアルバムなんだ。
何もかもがフル回転しているだろ。
歌詞から、ブライアン(・イーノ)による魔法のようなプロダクション
を取り入れながらクリスとティナがともに生み出していた、
グルーヴに乗ったヴォーカルに至るまでね。
ブライアン・イーノ&デヴィッド・バーンの
『マイ・ライフ・イン・ザ・ブッシュ・オブ・ザ・ゴースツ』は、
サンプリングを知性でもって活用した最初の作品という意味において、
多大な影響力を持ったアルバムだった。
彼らは、本体を支える土台というものを理解していたんだ。
つまり、たくさんのアイディアや革新性で脳をくすぐると同時に、
グルーヴの重要性がよく分かっていた。
見方によれば、これもまたテロリズムをテーマにした陰鬱な歌詞なんだが、
それが雄弁かつ詩的に表現されている。
僕らにとって大きなジレンマだったのは、
自分たちで課した“ドラムは入れない”というルールが、
曲のよさを消してしまわないかということだった。
この曲は素晴らしいグルーヴを軸に構築されていたから、
それを取り去ってしまっても、“生き物”として、
なおも歩き続けることができるのだろうか? とね。
確実にモノにするまでに、何度も何度も見直しを要した曲の一つだったよ」


06.「ザ・パワー・オブ・ザ・ハート」
初期ルー・リードの最高傑作と言われるソロ第3作目。
ボブ・エズリンの演劇仕立てのプロデュースによって、
ベルリンを舞台に悲しい恋物語が綴られるドラマティックな作品だ。
(オリジナル:ルー・リード/アルバム未収録)
 
「ルー・リードと知り合ってからは、もう随分長いね。
彼はこれまで数々の素晴らしい曲を手掛けてきたし、
彼が偉大な作詞家として受け止められいるのは正当な評価だよ。
アルバム『ベルリン』をロイヤル・アルバート・ホールで
演奏した公演(2008年6月)で、彼はこの曲をライヴの最後に演奏したんだ。
この曲はローリー(・アンダーソン)へのプロポーズなんだよ。
詞も曲も、桁外れに美しいと僕は思った。
だけどヴァース全体を強調するには、
サビ的な部分かリフレインが必要だと感じたんだ。
僕が新たに付け加えた部分をルーが気に入ってくれるかどうか、
彼のもとに曲を送った時はかなり緊張したよ。
というのも、これは(ルーにとって)とてもパーソナルな曲だったからね。
彼の返事では、とても乗り気な様子だった。
ラブ・ソングについて人々が考える時、
ルーは一番先に浮かぶ名前ではないけれども、
今後そうなると確信してる。
心からの誠実さが込められているこの曲は、
いずれロマンティックな定番曲となることだろう」


07.「マイ・ボディ・イズ・ア・ケージ」
カナダが誇る大所帯ロック・バンド、
アーケイド・ファイアが2007年に発表した2ndアルバム。
ダークなムードをたたえていながらも、
ドラマティックなメロディと歌唱が胸を打つ。
(オリジナル:アーケイド・ファイア『Neon Bible』収録)
 
「〈マイ・ボディ・イズ・ア・ケージ 〉(※“僕の身体は檻”の意)
というタイトルが、すごく気に入っているんだ。
最初に抱いた印象は、自分の肉体の中に囚われている
男が題材になっているということ。
その直前に観たフランス映画『潜水服は蝶の夢を見る』とよく似ている。
それから、人間関係や恋愛関係において、
自分にできることと自分のやりたいこととがうまく噛み合っていない時の、
気まずい瞬間についても思い出したよ。
またこの曲は、キャンバスに何色もの絵の具をぶちまける機会となった。
曲を短く編集したいという誘惑にも駆られたが、
僕はこの曲を極限まで拡大させようと主張したんだ。
万人受けはしないだろうけど、僕としては、
密度の薄い曲とのコントラストが非常に気に入ってる。
アーケイド・ファイアは非凡なグループだね。
大所帯ではあるが、そこには独特の表現方法で浮かび上がってくる、
決然とした一人の人間の声がある。
彼らは自分たちが住処としている光り輝く環境の中で、
ほかとは無関係に、独自に発生してきたんだ」


08.「ザ・ブック・オブ・ラヴ」
シンガー・ソングライター、ステファン・メリットを
中心とするLAのユニット。
99年リリースの本作は、タイトルどおり69曲のラブ・ソング
から構成された3枚組のコンセプト作だ。
(オリジナル:ザ・マグネティック・フィールズ『69 Love Songs』収録)
 
「ザ・マグネティック・フィールズは、
友だちを通じて紹介してもらったんだ。
彼らのソングライティングや、バンドとして自分たちの素材
を解釈する時の突飛なやり方に惚れ込んでしまったよ。
この素晴らしい曲の歌詞は、じつにロマンティックで、
同時に少しシニカルなんだ。
そのおかげで、お涙頂戴の感傷はお断りだという
聴き手にも受け入れられやすくなっている。
『69 Love Songs』の中でもとくに傑出した曲だと思うよ。
当時、僕の曲「シグナル・トゥ・ノイズ」のストリングス
に取りかかっているところでね。
この曲をストリングスで演奏したら、
きっと素晴らしいだろうなと思ってたんだ。
そしたらアレンジの仕上げが間に合ったんで、
「シグナル・トゥ・ノイズ」のセッション中に
(これを)レコーディングしたというわけ。
今回、娘のメラニーとまたヴォーカルで共演できたのは嬉しかったよ」


09.「アイ・シンク・イッツ・ゴーイング・トゥ・レイン・トゥデイ」
1968年のデビュー作。映画音楽での活躍も知られる彼だが、
アメリカの短編小説的な風情という点では、この人にかなう人はいないだろう。
ヴァン・ダイク・パークスも参加した、キメの細かいサウンドに泣ける。
(オリジナル:ランディ・ニューマン『デビュー・アルバム』収録)
 
「30年以上ずっと、ランディ・ニューマンは
僕の一番好きなソングライターの一人だった。
シリアスでシニカルな社会的的主張から、
彼が映画向けに作った美しいポップ・ソングに至るまで、
彼の曲にはつねに優れたメロディと歌詞、そして卓越したアレンジがある。
シニカル・モードの時は、彼はしばしば歌詞の中で、
自分が笑い者にしている登場人物を通じて語らせることがあって、
それがじつに素晴らしい効果を生んでいるんだ。
ランディの曲には大好きなものがすごくたくさんあるけれど、
ボブ・エズリンのおかげで、
「アイ・シンク・イッツ・ゴーイング・トゥ・レイン・トゥデイ」
のことを思い出したんだ。この曲は何年も前に僕が1stアルバムを作っている時、
ランディと一緒に仕事をしていて、彼が実際に僕の目の前で
弾いて聴かせてくれた曲なんだよ。本当に最高な曲だ」


10.「アプレ・モア」
ロシア出身、ニューヨークを拠点に活動する
女性シンガー・ソングライター/ピアニストの通算4作目。
さまざまな音楽要素を呑み込みながら、あくまでポップで
親しみやすい楽曲を並べている。
(オリジナル:レジーナ・スペクター『Being To Top』収録)
 
「僕にレジーナを紹介してくれたのは、上の娘のアンナだった。
娘はニューヨークでレジーナと出会ったんだ。
レジーナは非常に才能豊かだと思うよ。
とくに惹かれたのは、この曲の持つロシア的な特性だね。
パステルナーク(※ソ連の詩人・作家) の文が引用されている。
何度かロシア語で歌ってみようと挑戦してみたんだけど、
作品でそのまま使えるような域には達していなかったんだ、最後の単語以外はね。
その最後の単語が、次の情熱的なストリング・セクションへと繋がっている。
「黒い春となって燃えている間に」
(※パステルナークの初期の詩『二月だ インクをとって泣け』の
一節:“黒い春となって燃えている間に”)を基にしているんだよ。
お分かりの通り、朗らかで素敵なロシア語の文章だ。
今回のアルバムで僕が解放的になっているのは、
その一ヵ所だけだ。こんな風に叫んだのは『パッション』以来初めてだよ」


11.「フィラデルフィア」
ブルース・スプリングスティーン、ニール・ヤング、
シャーデー、オペラの歌姫こと故マリア・カラス
などのスーパースターが参加したサントラ。
ブルースの歌う主題歌はアカデミー、グラミー両賞に輝いた。
(オリジナル:ニール・ヤング『「フィラデルフィア」
オリジナル・サウンドトラック』収録)
 
「僕が成長の過程にあった頃、バッファロー・スプリングフィールド
の「For What Its Worth」という曲が、それまで聴いた中で何よりも
強く自分の感情に訴えかけてくる曲でね。
それをきっかけにニール・ヤングを聴くようになったんだ。
ニールはその頃からずっと、素晴らしい曲を世に送り出し続けてるよね。
彼はつねに良心に忠実な人であり、パイオニア(開拓者)であり続けている。
これは非常に洗練された極上の曲だと僕は思うんだけど、あまり世には知られていない。
繊細な歌詞、うっとりするようなメロディ、
そして魔法のようなキー・チェンジのすべてが、
とびきり素晴らしいこの曲の構成要素となっているんだ。
アレンジには、ヴォーン・ウィリアムズやエルガーを参考にした、
イングランド的なものからの影響が表われている。
そういった要素を僕らはアレンジに取り入れたんだ。
聴けば聴くほど愛着が湧いてくるような曲の一つなんじゃないかな」


12.「ストリート・スピリット(フェイド・アウト)」
94年発表の2ndアルバムとレア・トラックス集を併せた2枚組。
当時「クリープ」の大ヒットでプレッシャーを感じていた彼らだが、
ジョニーのギターが炸裂する「ジャスト」など粒揃いの曲を収録し、
高い評価を得た。
(オリジナル:レディオヘッド『ザ・ベンズ』収録)
 
「レディオヘッドは以前からずっと僕のお気に入りバンドの一つだ。
彼らは曲の構成においても実験においても、才気にあふれていて冒険的で、
つねに新たなチャレンジをしたくてたまらないみたいだね。
ジョン(・メトカーフ/ストリング・アレンジを担当)は、
最後の部分のコードを少し弄っていたんだ。
原曲のメロディをうまく活かすことができなかったんでね。
それで、今回のアルバムに収められているメロディが、
その問題の解決策としてインプロで演奏されたというわけ。
歌詞の最後の“immerse yourself in love”という一節には、
和解と受容の印象があると、そしてそれがこの曲を絶望から救い出していると僕は感じた。
じつに見事かつ自然な締めくくり方だ」


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